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擬似てんかん症という症状がある。 思い通りにならないと泣き叫ぶ、の大人版だ。 進行すると擬似てんかん症になる。 手で文章を書けなくなった脳の働き方のことと分かって 幸せになった物語
任尽召子さん(27歳・仮名)は、とても品のいい女性だというので評判でした。お友だちもたくさんいました。大学生のころは、「うっふっふ」とにっこり笑うので、「育ちのいいお嬢さま」と思われて、誰からも好かれていました。 大学4年の卒業も近いある日、突然、学校に来なくなりました。 お友だちがメールを出しても、スマホに電話をかけても返信がありません。
「昼間に家庭教師のアルバイトをして、夜まで学校の図書館で勉強した帰宅の途中でした。信号待ちの交差点の人混みの中に立っていました。 体がフラッとして意識がなくなりかけたのです。このとき、頭の中にてんかんという言葉と友人の女性の顔が思い浮びました」。 思い浮んだ女性の友人とは、10年来のお友だちでした。 浦内好子さんです。 ある日の学校の帰り道、浦内好子さんは、駅前の歩道で突然、ばったりと倒れたのです。 任尽召子さんと話しながら歩いている最中でした。 任尽召子さんが「うっふっふ」と笑って話しているその横で何も言わずどさっとあおむけに倒れたのです。こきざみに体をふるわせて、両手をつよくにぎりしめて、両手を空に突き上げて、水の中を泳いでいるようにもがくのです。 顔は白目をむき出しにして、歯をムキ出しにして口からせっけんの泡のような泡をぶくぶくと吹き出しています。 ヒェーッヒッヒッ、 キェーッ、 キーッキッキッキューッゥゥ…と、これまで聞いたことのない奇声を出して叫んでいます。スカートはまくれ上がり、脚を出してバッタバッタ、ガンガンと全身を波打たせています。 わたしは、怯えました。
「もし、わたしが人混みの中でこんなふうな発作が起きたらどうしよう。恥しくて生きていけない、もう人生はお終いだと思いました。やっとの思いで家にたどりついて、ベッドの中に倒れこんだのです」。 この日から任尽召子さんは、自室から一歩も出れなくなったのです。 「死への恐怖」さえ感じながら約一年間、ただ怯えながら泣き暮らしました。 なんどか友人と会うために家の外に出ました。勇気をふりしぼって「うっふっふ」と笑いました。 友人と話をしているとわーっと泣き出したり恐怖心と息苦しさ、焦燥感を感じます。ムリに「うっふっふ」と笑って泣きたい気持ちでその場を逃げ出しました。 任尽召子さんは、両親とも話せない、人と口をきくことも恐くなって家から一歩も出れなくなったのです。 病院に連れられて行きました。脳波は正常で何の異常もありませんでした。 |