[3679-2] 谷川うさ子 2015/03/31(火)09:40 修正時間切れ
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大学には自宅から通いました。 大学から帰ると母親が夕食をつくって待っています。スマホにメールが来ます。「何時ごろ帰ってくるの?」。 夕食は母親と食卓をはさんで食べます。母親は、教育関係の仕事に就いています。自分が見たり聞いたことをしゃべります。話している母親の顔と目を見ようとすると、母親の表情が急に変わります。 僕は、母親の目が気になって、食欲がなくなります。 ご飯を食べるのが辛くなります。 自分の顔と目を鏡で見ると、少しおかしいときがあります。たまに恐い目つきをしているなと思えるときがあります。
人は、母親の胎内で人間として成長します。最初は、男か女かはわかりません。まず女に形づくられて、その後、男に分かれます。分かれなかったらそのまま女として成長します。男になる、女になるという成長の中で、脳の基本のしくみも男の脳、女の脳になります。 男性は、母親の同調と同期という関わり方、話し方を学習して、人の顔を見て話せる、目を見ながら話せるようになるのです。 母親の同期、同調という接し方、話し方を学習しなかった男性は、人と一緒に居ても自分ひとりだけの世界の中にいるようになるのです。 女性の脳のしくみの基本は「自分ひとりだけの世界」の中に、ずっと居るということに耐えられなくなることです。しかし男性は、一生、ずっと「自分ひとりだけの世界」に居ても平気と思うようになります。アフリカのいろいろな動物も、牡(おす)だけが「ファミリー」から離れて放浪し、孤独の中で病死します。 人間の男性の場合は、女性の能力の対象を分かる能力を学習しなかったことが遠因で、孤立を受けいれるようになるのです。
会社に出勤する途中の道には猫がいます。座ってうずくまっています。僕いがいの誰が猫の側を歩いて通りすぎても、じっと目をとじています。僕が歩いていくと猫は目を開けて警戒の目でじっと見るのです。近づくと、僕の顔を見て、パッととび上がり逃げ去ります。 電車の中には、赤ちゃんがいます。母親が乳母車に乗せています。僕が、その赤ちゃんの顔を見て目を見ると、火がついたように泣き出すのです。スマホを見ていた母親は、赤ちゃんの側に行きます。次の駅で、スマホを片手にそそくさと降りていくのです。
会社に、熊山八重桜さん(32歳、仮名)がいます。 残業で遅くなったある日、一緒に帰路を歩きました。 「東山朝日さん」と話しかけてくれました。 「途中、ラーメン店に寄って行きましょう」と話しかけてくれました。 「何を食べる?」と訊ねてくれます。 「ラーメン店はお店、目的はメニューの中のラーメンを思い浮べることです」と教えてくれます。 「わたし、塩ラーメンが好きです」と言います。 熊山八重桜さんの気持ちがサッと分かりました。塩ラーメンのイメージが思い浮びます。 「僕も、塩ラーメンを食べたいとおもいます」。 熊山八重桜さんの顔と目を見て力強く言えました。 熊山八重桜さんは、にっこり笑顔で言います。 「ラーメンの好みと目的が一致しましたね」。 僕は、この日から女性の誰とも顔を見て、目も見て話せるようになりました。 |
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